2022年9月発行「Sustainable Innovation Lab Annual Report 2021」へ掲載された記事をお届けします。ユーリイ・ガガーリンが「Небо очень и очень темное, а Земля голубоватая.(空はとても暗く、地球は青みがかっていた)」と証言したのが1961年、バックミンスター・フラーが『宇宙船地球号操縦マニュアル』を発表したのが1968年(ついでにローマクラブが『成長の限界』を唱えたのが1972年だ)。地球を客観的に捉えることが具体的なイメージを伴って可能になった時代にすでに、人類が及ぼす地球への影響に対して警鐘が鳴らされていて、かれこれ半世紀以上ずっと鳴りっぱなしだ。人間の営みを俯瞰的に全て把握し、正しく評価することは、容易なことではないけれど、私たちはこの100年くらいの間に、地球に対してずいぶん大きな負荷をかけてきた。それがかなりヤバイ状況になっている、というのが大方の見解で、どうやらこのままではマズイと、多くの人が気づいている。私たちの暮らす地域社会(とそのシステム)は、目まぐるしく変化する世界にあって、旧態依然として一向に変わろうとしないようだ。2040年には自治体の半数が消滅の危機に瀕する、なんていう話も実しやかに語られていて、この社会システムはいずれ立ち行かなくなるだろう。国家や地方自治体というこれまでの枠組みが大きく変わらざるを得ない時に、自分たちの暮らしをどう守り、生き抜いていくことができるのか、地域社会の生存戦略が問われている。差し迫った課題のようでいて、私たちの多くにそんな実感はないのかもしれない。なんだか課題が山積みのように見えるけど、当事者である私たちはどう関与し働きかけ未来を創っていくことができるのか。地球という比較的大きな世界と、地域社会という割と身近な世界は、シームレスに繋がっていて、様々なシステムが交錯している。当然課題も複雑に絡み合っていて、地球にとって正しい道を選択し続けたり、地域社会をアップデートし続けることは、そう簡単ではないみたいだ。だから私たちは知恵を絞り、創造力を発揮し、様々なリソースを持ち寄って、共創の中で持続可能なイノヴェイションを模索することにした。100年後も地球と生きるために。ライター:中安秀夫編集:SIL事務局