Sustainable Innovation Lab(SIL)では、参画メンバーが自発的にさまざまなプロジェクトを生み出しています。メンバーの三ッ輪ホールディングス・加藤さんの実体験から発案された「子連れワーケーションプロジェクト」もその一つ。今回はSILと縁の深い奈良県奈良市月ヶ瀬にある「ONOONO(オノオノ)」協力のもと、親子でワーケーションを体験したレポートをお届けします。なぜ子連れワーケーション?今年の3月、SILが三重県尾鷲市と共同で実施したゼロカーボンシティ宣言に伴う記者会見。この時、SILで広報を担当する三ッ輪ホールディングスの加藤は、人生ではじめて子連れで出張に行った。不安とともに出発したが、地域の方々にあたたかく受け入れてもらったこと、子どもも喜んでいたこと、また行きたいと思える動機となる出会いがあったこと...出張の記録をまとめてnoteで情報発信したところ子育て世代のメンバーを中心に共感を集め、自分もやってみたい、という声が集まったことをきっかけに、今回の「子連れワーケーション」がはじまった。人生において守りたいものが増えると、行動の自由度が制限されていくものではないだろうか。特に家族のことは役割の代えがききにくい。仕事において脂がのってきて裁量が増え、自分の意思を徐々に反映できるようになってくる子育て層は特に、仕事と家庭のバランスを取るのに創意工夫が必要だ。子どもが小さくても、宿泊を伴う出張に行きたい仕事が忙しくても、子どもを色々な場所に連れて行き沢山の経験をさせてあげたい自分のキャリアをあきらめたくない、子どもや家庭も大事にしたいこのようなことが、贅沢ではなく、あたりまえになる社会を目指すためのステップとして、大人・子ども合わせて合計8名のメンバーで、奈良・月ヶ瀬の「ONOONO」をフィールドにしたトライアル企画を実施することに。(参加者側からの発案で企画が進んだこと、単にサービスを享受するだけではない姿勢が大事だったように思う。つくりたい未来は自分たちでつくるのだ)関わるみんなが幸せな形を目指して「子連れワーケーション」において、誰かが無理をすると持続可能にはならない。「ワーカー」「子ども」「訪れる地域」が全てHAPPYになる姿を目指すことにした。ビジョン子育てをしながら、他社・地域共創のステージで能力を発揮することをあきらめない社会をつくる親の仕事に同行することを「子どもたちにとっても価値ある時間を過ごすこと」につなげ、「仕事」と「体験(教育)」を両立する地域にとって、企業やワーカーとの共創や、若者・子育て層の関係人口増加につなげる施策の実現を目指すトライアル企画概要●実施期間2022/08/12 - 2022/08/14(2泊3日)●参加者・発案メンバー三ッ輪ホールディングス / SIL 広報:加藤(子ども・5歳)SIL事務局:浅川(子ども・3歳)日本郵政:小林(子ども・10歳&5歳)SIL事務局:矢嶋●企画・受け入れ場所:奈良・月ヶ瀬ワーケーションルーム「ONOONO」スタッフ:石毛さん、石見さん、皆川さん、光保さん協力:巽茶園さま / 倉家eto修司さま(写真家) / 川面さま、鈴木さま(保育) / 森の茶論さま●プログラム①親子一緒に体験するプログラム②親が見守った状態で、子ども中心に体験するプログラム③親は仕事に集中し、子どものみで体験するプログラムの3種類を設定。スケジュールの詳細はこちらから。全行程を終えて、それぞれ程よい(?)疲労感を抱えながらも、この場所ならではの体験価値の高い時間を過ごせたように思う。得るものが多かった反面、実際に足を運び自ら体験することによって課題も見えてきた。それぞれの立場からの振り返り1. 親(ワーカー)同じ空間内でお互いの姿が見えていると、子どもは親が気になり、親は子どもが気になり、集中し切れない場面も見られた。今回は土日を含む3日間だったので「バケーション」要素が強かったが、平日に実施する場合は「ワーク」の時間をしっかりとるために、①適切な期間設定(最低1週間)②保育専門家の日中サポートを得られる仕組みが必要。①には「親が所属する組織」からの理解が必須。働き方の多様化の方向性や、イノベーションを生むセレンディピティ機会を得るという意味では、五感を刺激するような職場以外での体験や、家庭を含めた社員のプライベートも大事にできる組織が選ばれる社会潮流になっていくのではないか。②には「地域の理解と行政の力」が必須。エリアによってはスポット利用で確実にシッターを確保できる見込みがなく、地域の学童や保育所に一時受け入れをしていただくことができれば効率的。学童や保育所など様々な受け入れ先を確保できれば、きょうだいがいる親子の選択肢も広がる。これには、「外の地域の一見さん」を受け入れてくれる地域の理解が何よりも重要に思える。2.子ども都会ではできない体験が多く、充実した時間を過ごせたことは言うまでもない。地域の子どもたちとの自然なふれあいや、ONOONOメンバーをはじめとした地域の大人たちとの交流により「また会いたい人」がたくさん出来たことが大きな価値であった。【子どもたちの声】茶畑とお茶づくりの体験は初めてで勉強になった。家でもお茶を淹れたい。お母さんと一緒に滝を見たり、みんなで新幹線づくりができたことも思い出になった。一緒に行った年下の子たちや地域の子どもたちに癒された。ONOONOの漫画に夢中になりすぎてみんなと話す機会が減ってしまったのは反省。(10歳女子)一緒に行ったみんなと話すのははじめは恥ずかしかったけれど、楽しかった。またONOONOに行って、神(皆川さん)やドラえもん(石見さん)やみんなと遊びたい。(5歳男子① )ONOONOで水遊びしたり、お茶を作ってみんなで飲んだのが楽しかった。石毛さんにかき氷を作ってもらって嬉しかった。またみんなに会いたい。(5歳男子② )またあそびたーい。スイカとかごはん、食べたいなー。(3歳女子 )3.地域プログラムを提供してくださった月ヶ瀬の方々に総じてあたたかく受け入れてもらい、プログラム外の時間でも積極的な交流を持たせていただくことができた。全国に沢山のワークスペースがあるなかで「ワーケーション」の場として選ばれるには、現地に「また会いたい」と思える誰かがいることが大切。親子それぞれに、そう思える関係性を地域の方と構築できたのではないかと思う。持続的な関係性に育っていけば、地域間を互いに行き来することでさらに仕組みも拡張できるのではないか。宿泊施設のキャパシティや、二次交通の確保については解決すべき課題として検討していきたい。現地の皆さんの声(一部抜粋)ONOONOは広さがあり、素敵な施設でした。近くに保護者がいることで、子どもたちも安心して過ごせたのではないかと思います。施設の設備や備品を事前に把握し、保育のスケジュールを立てておくことで保育者もより関わりやすくなるのではないかと思いました。(保育士・鈴木さま)梅の時期でなくても都会から来てくださって、改めて月ヶ瀬という土地の魅力を再認識させていただきました。(写真家・倉家さま)(宿泊受け入れ先として)沢山話ができ、単に宿泊先と宿泊客の関係を超えて心の触れ合いが感じられた。住民と来訪者が交流の機会を持ち意思疎通をはかることで、お互いの要望や目的を把握し、充実したワーケーション環境をともに作り上げることができるのではないかと感じました。(森の茶論・猪飼さま)できれば今後は体験を提供するだけでなく、来訪者側にも現地の農作業を手伝っていただくなど、地域の方と「仲間」になれるような機会も創っていければと感じている。(ONOONO・石見さん)企画者として3日間参加者と共に行動し、大自然やあたたかい地域の方々といった月ヶ瀬の魅力に触れながら個性豊かなONOONOメンバーと交流してもらったり、この場所ならではの体験に満足いただき、笑顔が溢れていたことはとても嬉しかった。(ONOONO・皆川さん)関東から来られる子ども達との出会いを楽しみに参加させていただきました。短い時間でしたが、本当にかわいくていい子達ばかりでもっと一緒にいたかったし、大きくなった子ども達にもまた会いたいです。(保育士・川面さま)仕事も遊びも育児も全力なお母さん方の姿は、わたしたちにも大きな刺激となりました。 出張に子どもを連れていける。親に付き合わせるのではなくて、子どもも実りある時間を過ごすことができる。こういう働き方があること、こういう働き方をしているお母さんたちがいることは、もっと広く知られてほしいと願います。 勇気をもらえるお母さん・お父さんがたくさんいらっしゃると思います。 今後もぜひ続けていただきたいですし、たつみ茶園も協力させていただきたいです。(たつみ茶園・巽さま)これから「子連れワーケーション」はどうなる?「地方創生」という言葉が生まれてから早8年。日本全体で人口減少が加速していく中、「移住」「企業誘致」の手法論のみでは限界がある。あらゆる世代のレイヤーで、都市と地方の関係性をつくっていく。都市と地方を互いに面白がる。その状態を目指すには、「あの場所にあの人がいるから会いに行こう」という動機にヒントがあるように思う。私たちは「ワーケーション」=「ワーク」「バケーション」+「ロケーション」と定義したい。親は働き、子どもは体験を通じて学ぶ「ワーク」があること。親子同時に楽しめる「バケーション」が過ごせる環境があること。例え豊富な観光資源がなくとも、人的関係性にもとづく「ロケーション」があること。改めて定義することで、「親子」と「ワーケーション」の相性が良いことに気づく。共感してくれる地域が増え、親子ワーケーションが一般化していくことで、キャリアをあきらめず、子どもや家庭も大事にしたい人たちの選択肢が広がる未来につながるのではないだろうか。「100年後も地球と生きる」ためには、大人も子どももウェルビーイングな状態であることが重要だ。今回の取り組みをきっかけに、親子ともに健やかに暮らせる社会への一歩を私たちの手でつくっていきたい。ライター:小林さやか(日本郵政)編集:加藤絵理子(三ッ輪ホールディングス)